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プラム・タート 第十九章 脱出 警告ランプが回り、リリーの周囲に様々な影を作る。警告ブザーによって、制御室に向かう彼女の心は嫌でも乱された。もうプラム・タートはコンテナに踏み潰されたはずだが、その手にはしっかりとレーザー・ガンが握られていた。制御室へは一度廊下に出てから倉庫の裏を回っていかなければならない。他に誰も助けてくれないと思うと、心底不安になった。しかし今の彼女は最初と違っていた。泣き叫ぶこともなく、自分の判断で行動している。 リリーは制御室へ入った。制御室の一面の窓からは貨物倉庫を見渡せる。その一角にクルーザーも見えた。大元のパワー・ジェネレーターは動いているが、機械はまだ止まったままだった。彼女はスイッチを入れる為に、大きなドアを開けた。その中にスイッチ類のコントロール・パネルがある。 彼女がドアを開けた瞬間、そこから人間が飛び出してきた。その人影はリリーに覆い被さった。これには彼女も悲鳴を上げた。彼女は飛び退いてその人影をやり過ごした。見ると、床にバタンと倒れ込んだのは、マーラだった。慌てて上を向かせるが、マーラはすでに死んでいた。バッドの言った通り、殺されてここに隠されていたのだ。 「そんな――」リリーの目が涙ぐんだ。 『ハイパー・スペース離脱まであと二分。』悲しむ余裕を与えず、機械仕掛けのアナウンスがリリーを急かす。 リリーはスイッチを全てオンに戻した。そして正面のコントロール・パネルに向かい、外部ハッチを開けるための操作を始めた。 『ハイパー・スペース離脱まであと一分。』 その頃には全て準備万端だった。あとはこの赤いボタンを押せば正面の大きなハッチが口を開き、宇宙へと彼女らを解放してくれるはずだ。この閉鎖されたロカタンスキー号での悪夢は終わる。エア・シールドもオンにした。 『ハイパー・スペース離脱まであと三十秒。』 リリーは静かに涙を流した。その表情は子供のように泣きじゃくっていたときとは違った。彼女はクルーのことを思い出していた。少し思い上がりの強いスコット、物静かだが頼りになる新人のソルゲノ、少々辛口なマーラ、ジョニーに嫌な命令をされながらも働いていたドロイドSS8、そしてみんなの家であるロカタンスキー号。全て今日でお別れになってしまう。 『ハイパー・スペース離脱まであと十秒、九秒、八秒――」カウントダウンが始まった。 自然と心臓の鼓動が高まった。ボタンの上に手を当てた。 『四秒、三秒、二秒、一秒。』 地震のような振動が起こった。リリーは衝撃で倒れてしまった。 『ハイパー・スペースを離脱しました。』リリーはまだ振動も続いている中でコントロール・パネルに手を伸ばした。『クルーはそのまま振動が止まるのを――』彼女はボタンを叩いた。 ガチャンと大きな音がした。倉庫の正面の大きな扉が少しずつ横にスライドしていく。ハッチが開いているのだ。その先に見えたものは青く輝く惑星ガンガーリの姿だった。二十四時間ぶりの惑星だった。長い長い二十四時間だった。 しかしここでのんびりとそれを眺めているわけにはいかない。リリーは制御室を飛び出し、廊下を走った。再び倉庫に入り、クルーザーへと向かった。エンジンは点けたままにしておいた。 クルーザー内の二つの台にはジョニーとバンブが寝ている。リリーは一人で操縦席に着き、すぐさまそれを飛ばした。少し壁にぶつけながら、貨物倉庫の中央まで船体を持っていった。そこから出口に向かって方向転換する。エンジンにパワーを注ぎ込み、クルーザーは一気に貨物倉庫内から宇宙空間へと飛び出した。 歓喜の瞬間だった。俊敏なクルーザーはロカタンスキー号から離れていく。十分に距離を取ったところで船の向きを変え、リリーはロカタンスキー号の方を見た。 二隻のスター・デストロイヤーがどこからともなく現れ、ロカタンスキー号に攻撃を始めた。ロカタンスキー号はいとも簡単に破壊された。逃げるのが遅ければ、今ごろは一緒に吹き飛んでいただろう。彼らは脱出に成功したのだ。 つづく |