TIEパイロットDS-360-17 最終章

 大ネズミを下げて帰ってくると、通信機に反応があった。誰かがSOSに返信しているのだ。彼はすぐさま通信機に飛びついた。
『こちらソーラー9、ソーラー17応答せよ。こちらソーラー9――』
「早く信号を打って」少年が急かす。
 ソーラー9は裏切っていなかった。彼は、アカデミーで覚えた信号のパターンを思い出して信号を送った。彼は自分は無事でリーダーが重傷であること、戦闘機は完全に破壊されたことを告げた。
『こちらソーラー9。戦闘機の故障で不時着している。帝国軍にSOSを送り――』通信が乱れる。『――帝国軍の船がこちらに迎えに来る。明日の朝だ。今日連絡が取れてよかった。宇宙船は明日しか来ないぞ』ソーラー9は場所を言った。『そこで明日の朝会おう』
「了解」と送って通信を終えた。そして大きくため息をついた。ようやく帰れるときが来る。その時は喜びに満ちた思いだった。
「やったよ、おじさん。成功した!」
「ありがとう」彼は少年と手を合わせて喜びを分ち合った。

 その日の夜、二人は外で炎を囲んでいた。二人はその炎で大ネズミを焼いて食べた。その日は彼が初めて見るタトゥイーンの星空だった。
「仲間の人と連絡できてよかったね」少年はなんだか浮かれない声で言った。
「ああ」彼は明日には帰る。それは二人の別れを意味していた。今となっては彼もそのことに気づいていた。
「明日になったら帰っちゃうの?」
「明日しか宇宙船が来ないんだ。帰ったらまた戦闘機に乗る」
「名パイロットだもんね」
 その言葉を聞いて彼は思わず鼻で笑ってしまった。「本当は名パイロットなんかじゃないんだ。戦闘も初めてだった。しかも下の方でずっと戦いを見てた。敵なんて一つも落してないよ」
 そう言って二人は笑い合った。
「よかった」少年は言った。彼が「なぜ」と訊くと、少年は答えた。「だっておじさん人を殺したことないんでしょ。やっぱりおじさんいい人だよ」
 彼はため息をついた「でも、帝国軍に戻ったらきっと人を殺すことになる。反乱軍がどんどん勢力を増してる。帝国は厳しい戦いを強いられるだろう」
 少年が黙っていると思うと、彼にすりよってきた。少年は我慢することもなく泣いていた。「今まで毎日泣いてた。おじさんが来て、我慢できると思ったけど、やっぱり夜に泣いちゃったんだ。」
 彼は少年の小さな体に腕を回した。
「……行って欲しくない」
「俺は帰らなければならないんだ」彼は言った。
「どうしても?だって帝国軍はあなたを宇宙に置いてったんでしょ。それなのに戻るの?」
「故郷にある女性を置いてきた。戦争が終わったら彼女の元に帰るつもりだ」そう言って彼は、TIEファイターの残骸から拾ってきたホログラム投影機をポケットから取り出した。彼がスイッチを入れると、炎に照らされた夜の空気に一人の女性の姿が再現された。
「この人だれ?」少年は涙ぐんだ目でそのホロを見つめた。
「彼女を愛してる」
「結婚してるの?」
 彼は首を振った。「いや。する前に軍隊に入った。でもそうしたいと思ってる」
 その後二人は一言も口をきかなかった。そして気が付かないうちに二人寄り添って寝てしまっていた。

 その日も彼は夢を見た。彼は故郷の恋人の元へ帰っていた。新しい家での幸せな生活。彼ら二人には一人の子供がいた。三人はのどかな田園風景が広がる惑星シャンドリラで農業に勤しみ、充実した日々を送っている……。

 幸福な夢から目覚めた時、未だ地平線の下にいる太陽が、空を染め始めていた。早朝のまだ涼しい風が彼らを取り巻き、星空はだんだんと追いやられていく。
 彼は夢のことを思い出した。故郷での生活。現実にはまだいない彼らの子供。彼は自分の子供の姿を思い出してみた。それがこの少年であったら、どれだけ素晴らしいことか。
 太陽の一つが顔を出し始めると、少年が目を覚ました。
「起きたのか?」彼は少年の顔に目を向けた。
 少年は寝ぼけ眼をこすった。「おじさんまだいるの?」
「ああ、ちゃんとここにいる」
「こんな朝は来なければ良かったのに」少年は膨れっ面だ。
 彼はそんな少年に笑って見せた。「俺は今朝帰ることにするよ。でも軍隊はやめる。俺――DS-360-17はパイロットには向いてないみたいだし。それで故郷に帰って、彼女と結婚する」
 少年は顔をうつむけた。
 彼は言葉をつづけた。「そしたら二人で宇宙船に乗って、お前を迎えに来る」
 少年はばっと顔を上げた。「本当に!?」
「ああ」彼は笑顔で答えた。
 喜びのあまり少年は立ち上がって飛び跳ねた。彼も同じく立ち上がり、二人は目を合わせた。
「本当に迎えに来てくれるの?」
「ああ。もし――こんな俺でいいんだったら、俺たちの息子になって欲しい」
「本当!?僕、今日夢を見たんだ。おじさんとあの女の人と僕が一緒に暮らしてるの」少年は興奮気味に言った。今、少年の目は朝の二重太陽の光で、この前以上に輝いていた。「見て、日が昇ったよ」
 タトゥイーンの双子の太陽は地平線から完全に姿を現した。二つは虹色に輝くオーラを発し、二人の朝を祝福しているようだった。
「きれい」少年は言った。
「この星でこんなに美しいものが見れるなんて――」
「ねえおじさん――」
 少年が言うと彼は言葉をさえぎった。「おじさんて言うのはもうやめよう。俺の名前はクーラ。いつかは君がお父さんて呼んでくれたらうれしいよ」
「僕はケル」
 ここで二人は初めてお互いの名前を知り合った。
「よろしくケル。」彼は手を差し出した。
「こちらこそクーラ」少年はその手を握り、満面の笑顔で握手を交わした。「きっと迎えに来てね」
「ああ、必ず戻ってくる。それまで待っていてくれ」
 二人はタトゥイーンの朝日に誓って約束を交わした。

 少年と別れ、彼と負傷したリーダーは宇宙船の着陸ポイントに行き、ソーラー9と合流した。三人は無事に帝国軍に保護された。
 彼は改めて、再びこの地に戻ってくることを誓った。必ずケルを迎えに来る。その時二人は本当の親子になるのだ。
 クーラは大気圏外へ向かう宇宙船の窓から、砂漠を疾走するイオピーに乗った少年の姿を見た。

おわり
あとがき
 これは2004/04/22(木)、2004/04/23(金)、2004/04/24(土)、2004/04/25(日)にスター・ウォーズの鉄人!の交流板の「自作小説発表トピ」に投稿したものです。最初は二話くらいを想定してましたが、二話が三話になり、三話が四話になってしまいました。
 舞台はタトゥイーンにしようか、森の惑星にしようか迷いましたが、結局タトゥイーンを選んで正解だったと思います。それにより、映画で登場したものを話の中に織り込むことができ、ストーリーのSWとしてのリアリティを高めています。

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