TIEパイロットDS-360-17 第二章

 タトゥイーンの二重太陽は、体温を調節する宇宙服も無用の産物にしてしまった。しかもこの服は砂地を歩くには重すぎた。DS-360-17はヘルメットと重い装置を脱いで、自分のTIEファイターの落下地点に歩いた。
 かすかな希望は持っていたが、TIEファイターはバラバラになって修理不能であることが見て取れた。一枚のソーラーパネルは地面に突き刺さり、球体のコックピットは真っ二つになっていた。勿論通信機は壊れていた。彼はそのコックピットの近くで、ある物を拾った。
 これが残っていてよかった。
 それは小さなホログラム投影機だった。彼がスイッチを入れると、一点から光が放たれ、何もない空間にある人物の像を結ぶ。
「おじさん誰?」
 真後ろから声が聞こえた。彼はとっさに小型ブラスターを向けて振り向いた。
「墜落したの?」
 それは白い肌のイオピーに乗った少年だった。彼は銃をホルスターに戻した。どうやら少年は、親もなく一人でここまで来たようだった。地元の人間だろうか。だとしたらソーラー・リーダーが落ちたのも見ているかもしれない。
 彼は少年に歩み寄った。「他にも戦闘機が落ちたはずだが見たか?」
「うん、あっちにも落ちた」
「墜落する前にパラシュートで脱出してなかったか?」
「わかんないけど。案内するよ。乗りなよ、二人くらい乗ってもこいつは大丈夫」
 少年は自ら案内を申し出た。この子供を利用するのも悪くない。いざとなれば、いくらでもねじ伏せることができるのだ。
「おじさん、帝国軍のパイロットなの?」イオピーの背中の上で少年が言った。
「ああ」彼は質問に答えるのが面倒で生返事を返しただけだった。
「認識番号はDS-360-17でしょ」このガキときたら、いつの間にか彼の胸のバッジを読み取ったらしい。「すごいパイロットなの?どこの隊にいたの?敵に追われてたけど、二機いたのにどうして反撃しなかったの?」
 少年はTIEファイターを二機しか目撃していないようだ。「味方が三機いたはずだが、見なかったのか?」
「ううん、僕が見たのはインコム(Xウィングのことだろう)が二機を追ってるのだけ。おじさんともう一人は落とされちゃったけどね。おじさんも、インコムに乗ってたら勝てたと思う?」少年は次から次へと質問を繰り出してくる。まるで、Xウィングのレーザー放射のようだ。
 彼は質問に無視した。子供の疑問にいちいち答えていたらキリがない。
 ソーラー・リーダー機も同じように大破していた。彼はコックピットを覗いたが、中にはいない。どうやら脱出には成功したらしい。リーダーはどこに着地したのだろうか。
「こっち!」
 リーダーは少年によって発見された。しかしリーダーの意識はなかった。脱出する前にコックピット内で火事が起こったようだ。火傷を負い、煙を吸ったのだ。
「まだ息はあるよ。早く僕の家に運ぼう。パラシュートを被せて。直射日光が当たらないようにしないと。フライトスーツを脱がせて」
 全く賢い少年である。彼にとってはとても都合がよく、使い物になる子供だ。リーダーをイオピーの背中に乗せ、彼は砂漠を歩いた。

 何の変化もない砂丘地帯を越えて彼らは少年の「家」に着いた。それは峡谷地帯近くのただの洞窟だった。
「ここが僕の家。クレイト・ドラゴンの巣なんだ。もう住んでないから僕が家にしてるんだ。向こうに行くとべガース・キャニオンがあって、サンド・ピープルが住んでる。でも、クレイト・ドラゴンがまだ住んでると思ってこの辺には近寄らないんだ」
 少年は語った。洞窟の中は真っ暗で、少年が火を点けてその中が照らし出された。中には砂漠で拾い集めてきたと思われるガラクタが積んである。なかにはスピーダーのエンジンもあった。彼らはリーダーをぼろマットの上に寝かせた。
「帝国軍に連絡したい。近くに町は?」
「モス・アイズリーがあるけど、前行ったときは帝国の兵隊がいたかな」
 少年の言葉に彼は少しだけ不安が解放された。モス・アイズリーに行って適当なストーム・トルーパーに話をつければあとは何とかなる。そう思っていた。

 次の日、彼と少年は一匹のイオピーでモス・アイズリーへ行った。リーダーの状態はよくならず、少年の言った通りに洞窟が安全であることを願って置いてきた。
 モス・アイズリーは宇宙のゴミのような、あらゆる種族が集まる場所だ。そこでは帝国軍のフライトスーツを着た人間がいても、誰も気に止めることはないだろう。
 しかし問題が起こった。ストーム・トルーパーはおろか、帝国軍の兵士は全くいなかったのだ。
「帝国の人間が見当たらないな。前来たのはいつだ?」
 少年は答えた。「うーん、うんと小さい時だったから、お父さんとお母さんと一緒に――」少年は急にそこで言葉を止めた。
「お父さんとお母さんがどうしたって?」彼が聞いても少年は答えなかった。全く俺ときたら、このガキのことなんかどうでもいいじゃないか。それよりも昔はいた帝国軍は、もういないらしい。ここも反乱同盟軍によって帝国の軍隊は追い出されてしまったのだ。
「俺はそこの酒場で情報がないか行ってみる。お前はここで待ってろ」

 酒場でもよい情報は掴めなかった。大抵の者は「いつの間にか帝国軍がいなくなっていた」と言い、ある者は反乱軍の活躍を知っていた。カウンターにいたウーハーという男に訊いてみても同じだった。
 酒場に出ると彼ははっとした。少年がいないのである。やっぱり一緒に連れて行った方が良かったのだ。
「おじさん」
 振り返るとイオピーを引き連れた少年がいた。
「どこに行ってた?待ってろと言っただろ。逃げ出したと思った」
 少年はニヤっと笑った。「これをジャンク屋で買ってきたんだ」少年が持っていたのは、恐ろしく古くてボロい通信機だった。「単純な信号しか送れないけど、受信は何でもできるよ。たぶんおじさんの銃のパワーパックで動くと思うんだ」
 彼は少年から通信機を受け取った。この子供は彼のためにこれを買ってきた。彼が帝国軍の仲間と連絡が取れるように。
「こんな金を持ってたのか……?」
「ジャワに砂漠で拾った物をいろいろ売ってるんだ。お金は貯めてきたんだけどね。こんな通信機しか買えなかったよ」
 このとき、彼は初めて少年の目を真直ぐに見た。双子太陽で輝いた純粋な目。このとき彼は何も言葉が出なかった。
第三章
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