ボバ・フェットとその親友

 真っ赤な大空の惑星アドミレラ。その南極部は一年中夜になることがない。そして絶えることのない風が山を越えて大地に吹いている。
 全身を装甲服で包み込んだボバ・フェットはマントをたなびかせて砂の地面に立っていた。細かい砂の粒子が風に吹かれ、地面を這っていく。それによって大地そのものが、この星には存在しない海のように波打っている。
 彼のすぐ近くには一人の男が横たわっていた。そしてボバ・フェットの手にはブラスター銃が握られている。

 ボバ・フェットとザイサシは初め、賞金稼ぎとしてのライバルだった。二人はどちらも自分が最も優秀な戦士だと信じていた。それゆえお互いに敵同士だった。一つの獲物を競って追ったことも何度もあった。
 しかし彼らは何度も争い合い、顔を合わせ、時には相手を殺そうと対決しているなかで信頼を深めていった。二人は親友となった。
「俺たちは銀河で最高の賞金稼ぎだ。そう思わないか?」ザイサシはそう言っていた。
「全くだ」ボバはいつもそう答えていた。
 二人は常に行動を共にすることはしなかったが、顔を合わせれば、自分のした仕事の自慢話をした。普段はできない世間話もした。ザイサシは、ボバ・フェットの素顔を知る数少ない人物の一人となった。
「今度でかい仕事が入ったんだ」ザイサシは言った。「お前も仲間に入れてやるよ。俺一人でもできるが、二人の方が何かと便利だろ」
「いや――俺も次の仕事があるから当分無理だ」

 しかし彼らが共に仕事をする日は来なかった。ギャングからボバ・フェットに依頼された仕事、それは敵対するグループに雇われているザイサシを殺すことだった。ボバはザイサシを殺す仕事とは知らずに依頼を受けていた。
「まさか、ザイサシの殺しにためらってるんじゃないだろうな?お前の雇い主は俺だぞ、ボバ・フェット。前金はもう払ったんだ。仕事をしてもらわないと困る。もしここで断ったら、お前の評判も落ちることになる」
「……仕事は必ずやり遂げる」
「お前なら分かってるはずだ。失敗したらお前の船をバラバラにして溶かしてやる」

 ボバ・フェットとザイサシは惑星アドミレラで対立した。彼らはどちらも武器を手にしていなかったが、すぐに取り出せる態勢になっていた。
「どうやら妙なことになった」ボバは言い訳じみた言い方で言った。
「俺を殺すのか?」
「それが俺の仕事だ。父親もそうだった」
 ザイサシは舌打ちをした。「チッ、こんなときばっかりは、ヘルメットをつけやがって」
「お前は俺を殺すか?」ボバは言った。
「お前が俺を殺すって言うんなら。答えはイエスだ」
「俺たちは最高の賞金稼ぎか?」ボバはかつてのザイサシの言っていたことを改めて聞きなおした。
「いや、最高はいつも一つだ」
「お前が最高だよ、ザイサシ。だが、俺はお前を殺さなければならない」
「ここで決着をつけてやる。生き残った方が最高の賞金稼ぎ。死んだら何もかも終わりだ」

 勝負は一瞬で終わった。二人はほぼ同時に銃に手を伸ばし、ほぼ同時に手に握り、ほぼ同時に相手に向けた。
 しかし勝者はボバ・フェットだった。ザイサシは倒れた。彼は死に、この惑星にはもうボバ一人しかいない。
 ボバは驚きと後悔の念に襲われた。彼はブラスターを手に持ったまま立ち尽くしていた。同時に銃を取った二人。ボバが勝ったのは、ザイサシが引き金を引かなかったからである。彼は最初からボバを殺す気などなかったのだ。
 俺は唯一無二の親友を失ってしまった。その親友は俺を殺したくはなかったのに。
 ボバ・フェットは賞金稼ぎの自分を呪った。自分の親でありオリジナルであるジャンゴ・フェットを呪った。そしてその父親を殺したジェダイを呪った。
 彼は友情よりも自分の、仕事を必ず成し遂げるというプライドを優先したのだ。
 ザイサシの体は波打つ砂の流れの中に埋もれている。これから砂が堆積して完全に地中に埋まってしまうだろう。時が経てばこの宇宙の端にある星に埋もれた男のことなど、誰も覚えてはいない。
 しかしボバの記憶には残っているだろう。彼は今後一切他人との深い交流は立ち切ることを誓った。賞金稼ぎとしての仕事に徹し、友人は二度と作らない。
 彼はマンダロアのヘルメットを脱いだ。
「You're my only friend in the Galaxy forever . I love you. 」
 誓いの通り、ザイサシはボバ・フェットにとっての最初で最後の親友となった。彼は完全なる銀河の一匹狼となったのだ。

おわり

あとがき
 これは2004/05/11(火)にスターウォーズの鉄人!の交流板の「自作小説発表用トピ」に投稿した物です。
 不覚にもだんだん長くなってきたので、一話完結の話でもしようかと思って書きました。またしてもボバ・フェットが主役。クールなボバの知られざるストーリーの一つです。ザイサシを殺した時に泣き付くんじゃ「ストーム・トルーパーRS-993」のときと同じだもんね。ボバはやっぱりクールに決めないとイメージが。

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