青いドロイド 第五話 恋

 R5-W55はコルサントの下層部をさ迷っていた。この奥深い場所まで直接降り注ぐ雨はほとんどない。しかし天井や壁を伝った雨水が滴り落ち、床に水溜りを作っていた。それ以外にも水道管から漏れているところもあった。
 彼女はあやしい集団を発見した。多くの人々が集まっている。その中心では何かと何かが交換されているようだった。
 ギャング団同士のスパイス売買を目撃してしまったのだ。片方のグループは人間で、もう一方はアクアリッシュのグループだった。そこでは一体のプロトコル・ドロイドが両者の言葉を繋いでいた。
 しばらく隠れて見ていることにした。彼女はあのプロトコル・ドロイドのことが気になっていた。
 すると、何やら両者が騒ぎ出した。商談がまとまらなかったらしい。誰かがブラスターを撃って瞬く間に撃ち合いになった。一瞬の間にいくつものレーザーが飛び交い、前に並んでいた人間とアクアリッシュはほとんど撃ち殺された。
 R5は恐怖で動き出すタイミングを失い、あのプロトコル・ドロイドを目で追った。驚いたことに、あのドロイドは脚に隠されていたブラスターを取り出し、人間側に加勢した。ドロイドは次々にアクアリッシュを撃ち殺していった。
 事態は収拾せず、あらゆる通路からさらにギャング団が乱入してきた。その激戦地でプロトコル・ドロイドはレーザーを受けてバラバラに吹き飛んだ。今となっては周辺広範囲に渡って銃撃戦が始まっていた。
 R5はその場から逃げ出した。彼女の横を何人かのアクアリッシュが通り、次の瞬間その半分が光弾に倒れた。彼女は全速力でその場から離れた。

 入り組んだ地下街で方向も分からなくなった。もしかすると、さっきの場所からほとんど遠ざかっていないかもしれない。レーザーの音がたまに聞こえてくる。
 そこで彼女は一人の男と出会った。地面に座り込み、壁にもたれかかった男。気づいた時、彼女は彼のすぐ近くまで近寄っていた。
「おいチビ」男はギャングの一人らしく、垂らした手に銃を持っていた。「さっき隠れて見てただろ。来いよ」
 彼女はためらった。
「いいから。いじめたりしない」
 彼女は男の横まで行った。何をするかと思うと、男は彼女の頭をそっと撫でた。
「ガキの頃、家にお前みたいなドロイドがいた」男は言った。「青いやつだった。ずっと本当に生きてると思ってた。俺が何か言えば、あいつは応えた。好きだったのに、解体されたときは泣いて泣いて――あの時から俺はグレるようになっちまった。バカな男だ」そう言って男はドロイドに微笑みかけた。
 もしかしたら、悪い人じゃないのかもしれない。R5は体内に仕舞っておいたカラーパネルを差し出した。おばあさんに壊されてしまったパネルだ。
「なんだチビ?」彼はパネルを受け取った。「こいつを付けて欲しいのか。ほら付けてやる」男は彼女の頭にパネルをはめ込んだ。
 R5は喜びを表わして頭を振って鳴き声を出した。
「こいつ、可愛いやつだ」笑いながら言った。「お前は解体されなきゃいいな――」
 そのときぱっと男の表情が変わった。R5がどうかしたのかと彼の顔を覗きこむと、男は立ち上がった。
「あいつらまだ追ってきた」
 何人かの足音が聞こえてくる。男は銃を構えた。彼は戦おうとしているのだ。しかしR5は彼にそんなことをして欲しくなかった。彼女は男の前に出て押し戻そうとした。
「邪魔だチビ」男は冷たくドロイドを振り払った。
 R5は寂しそうに鳴き声を出した。
 男は立ち止まって静かに言った。「俺は間違った道を歩いてきた。お前の主人には、そういう道に行かないようによく説教をしておきな」
 五人のアクアリッシュがレーザーを撃ちながら現れた。男はブラスターで応戦した。一発、二発――二人のアクアリッシュが倒れた。しかし彼一人では抵抗もそれまでだった。彼はレーザーを胸に食らい、それから何発ものレーザーが彼の体を突き刺した。

 R5は倒れた男に近寄った。男はぴくりとも動かない。
 彼女は恋をしていた。しかしそれもドロイドには無縁なもの。彼女は男の亡骸を後にした。彼女は何度もその死体を振りかえった。
第六話
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