青いドロイド 第四話 放棄

 このままおばあさんと一緒に幸せな生活を送れる。R5-W55はマンションの窓から朝焼けに照らされたスピーダーや宇宙船の列を眺めていた。
「おはよう坊や」おばあさんが杖をついて寝室から出てきた。
 R5は口笛を吹いて返事を返した。このおばあさんもとても良い人なので、彼女は安心していた。
「今日は坊やの仲間が来るわよ。二体が揃うのがとっても楽しみだったの」
 仲間とはなんだろうか。そのときのR5は深く考えていなかった。しかしこれは長く続く不幸の幕開けであった。
 その日、R5が入れられたのと同じ箱が部屋に届いた。
「さあ、見てみましょうね」
 R5も好奇心でその箱に寄って来たが、何か嫌な予感がしていた。
 I have a bad feeling about this box.
 昨日と同じ配達員がおばあさんにサインを求めている。箱が開けられると中に入っていたのは一体のR2ユニットだった。配達員によってスイッチが入れられたそのドロイドはショールームでR5をいじめていていたR2-U9だった。R5は悲鳴にも似た叫びを上げていた。
 なんでお前がいんだよ。
 よりにもよって、こんなR2と一緒になるなんて――
「まあ、こっちのも可愛いじゃない」おばあさんは、昨日のR5と同じようにR2の頭を撫で回した。
 まあいいさ。R5よりR2の方が優秀だってことを見せ付けてやる。そうなったらお前もスクラップだ。
 二体のドロイドは始めから対立した。R5の幸せな時は一瞬で終わったのだ。

 おばあさんが夕食のスープを火にかけていると、R5はそれを見ているように頼まれた。おばあさんが奥の部屋に消えると、さっそくR2がやって来た。
 何よあんた?
 あのばあさんも、つまんないやつだ。アストロメク・ドロイドを二つも買って宇宙船も持ってないなんて。
 R2は愚痴を溢しに来たのだろうか。きっと彼はドロイドは二体もいらないと言いたいのだろう。確かに可愛いという理由だけでドロイドを買ったあのおばあさんに物足りなさを感じないわけではない。R5もアストロメク・ドロイドとしての仕事をしたいと思っていた。
 R2はしばらく黙って彼女を見つめていた。また何かつまらないことでも考えているのだろうか。
 次の瞬間、何を思ったかR2は腕を出してスープの鍋を落した。そして鍋と真っ赤なスープは見事にR5を直撃した。R5が悲鳴を上げていると、そそくさとR2は去っていった。
 かと思うとR2はおばあさんを引き連れて戻ってきた。
「まあ!なんてことをするのこの子は」その言葉はR5に向けられていた。
 私じゃないのに……。
 R2が笑っている。R5は真実を伝えたかったが、彼女の言語ではおばあさんには理解してもらえない。
「私のレンズベリー・スープが台無しじゃない」おばあさんは怒りの色を示していた。「火の加減を見ててって言っただけなのに。犬よりバカなドロイドね」
 R5はこれからの展開が恐ろしくなって弱々しく声を出した。おばあさんが杖でR5の頭を叩くと、カラーパネルがまた外れてしまった。R2はそんな彼女をバカにするように言った。
 ざまー見ろ。

 コルサントの夜は雨だった。R5は捨てられてしまった。マンションの部屋からは美しく見えた都市も、下層部は明かりも少なく、ホームレスと思しきエイリアン種族がたむろしていた。
 結局おばあさんの結論は「ドロイドは二体もいらない」ということだった。たった一つのドロイドの座はR2に奪われてしまったのだ。
 彼女は傘をさすおばあさんに付いて行こうとしたが、そうすると杖で叩かれた。その傘にはR2も一緒だった。
 彼女は見たこともない場所に一人取り残されてしまった。コルサントのダウンタウンは彼女が想像していた世界とは違っていた。
第五話
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