青いドロイド 第二話 脱出

 次の日からR2-U9はショールームから消えた。そしてドロイドたちは一気に希望を持った。在庫がなくなれば自分も買ってもらえる。それからRシリーズの他のドロイド、R3-C1とR4-L6は今まで以上に、張りきって「見本」としての仕事を務めた。
 透明なドームの頭を持つR3は「次に売れるのは自分だ」とR4に話していた。R3は政府の軍組織に特化されたドロイドであり、在庫数は少ないと思われるからだった。しかし実際R3-C1はショールームの飾りのようなものである。共和国軍がなぜこの店からわざわざ彼を買うだろうか。彼には可愛そうだが、R3-C1はしばらく売れそうにはない。
 そんな二体のドロイドを尻目に、R5-W55はいつものショーウィンドウの近くで外の世界をあれこれ想像していた。
「できるだけ安いアストロメク・ドロイドがいいんだ」その声が彼女の耳に届いた。彼女は頭をぐるりと回してその声の主を探した。
 ローディアンの親子二人だ。
「それならばあちらのR5ユニットがお薦めです。性能はR2のものを引き継ぎ、破格の値段となっております」店員はセールスのためには多少事実を捻じ曲げる。
 R5は口笛を吹きながら親子のもとへ駆け付けた。ローディアンの息子はR5とほとんど同じ背だ。「こいつ変な顔してるよ、パパ」少年はR5の頭をバンバンと叩いた。
 R5はそのたびに小さな悲鳴を上げた。少年はそれが面白くてさら続けた。
「ほら、あんまり触るのはやめなさい」
 父親はそう注意したが息子はほとんど聞いていないようだった。少年はなかなかやめようとしてくれない。R5は我慢していたが、とうとう一歩後ろに下がった。
「こいつ逃げるなよ」
 少年は今まででいちばん強い力で彼女の頭をドンと叩いた。するとR5の頭部のカラーパネルが一枚取れてしまった。R5はとうとう大きな声で悲鳴を上げた。
「パパ、こいつ壊れた」
 父親はそんな息子を叱るどころか、店員に顔を向けた。「こんなボロを売ろうとしてたのか?」
「いえ、とんでもありません。これは展示用の見本でして、今まで多くの方に触られている物で――」すぐさま店員は弁明した。
 その騒ぎに店長が駆けつけた。「何か問題でも?」
 その後、ローディアンの親子は悪態をついて帰っていった。その間、R5は体から腕を伸ばして落ちたパネルを拾っていた。彼女はそれを付け直して欲しくて店長に近づいた。しかしその存在に気づかなかった店長は、後ろに下がってR5を倒してしまった。
 R3とR4がげらげら笑っている。
 バカなのろまが転んでら。
「なんだこいつは?」店長の機嫌は悪くなっていた。「これはもういい。新しいR5を持って来い」
 R5は店員の一人に立て直してもらった。手に持っていたパネルがどこかへ飛んでしまったので、彼女はそれを探した。
「このR5はどうしましょう?」
「代わりのドロイドはいくらでもある。それはバラバラにしろ。使える部品は修理工場に回せ」
 それを聞いたR5は思わず叫んでいた。店員の一人がこちらに近づいてくる。
 彼女は逃げ出した。三つの足を地面に着けてモーターを全開にし、店の出口に走った。しかし丁度数人の客が入ってくるところだった。彼女はくるりと回転し、裏口に向かった。
「そいつを捕まえるんだ」
 裏口のドアは、入ってくる作業員が開けていた。彼女は作業員の傍らを通過して外に出た。
第三話
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