青いドロイド 第一話 R5-W55

 アストロメク・ドロイドR5-W55は一面のショーウィンドウから、スピーダーで渋滞する通りをぼーっと眺めているようだ。しかし実際は道路を通る一台一台の姿をインプットし、自分の情報と照合して分析しているのだ。こうして彼女は自分の能力を高めようとしていた。
 白いボディの各部に青いアクセントがついたR5-W55は、コルサントにあるインダストリアル・オートマン社のディーラーのショールームに並ぶ一台だった。アストロメク・ドロイドで大成功を収めていた会社はR5という汚点を残していた。R5-W55は自分がその汚点であることを承知していた。そのために他のRシリーズのドロイドからは、いじめの標的となっていた。特にR2-U9は彼女にとって大敵である。
「この青いのは何だ?」客の一人が言った。
「R5ユニットです。他のどのドロイドよりもお安くなっております」店員がそんなR5の利点を語った。「R2並のオプション装備を搭載してもまだ安くお買いになれます」
 R5-W55は大男の客に擦り寄った。彼女は自分に興味のある客が来ると、こうして愛嬌を振りまくのだ。しかしそこにあのR2-U9が割り込んできた。
「こっちのはどうだ?」客の興味はR2に移ってしまった。
「はい、R2は我が社の自信の商品です。性能はどのアストロメク・ドロイドよりも優ります。こちらをご購入いただければ、あなたはきっと宇宙旅行を満喫できるでしょう」さっきはR5のことを語っていた店員は、今度はR2のことを雄弁に語った。
 しばらくして大男はR2を一体購入するということで契約書を書いていた。しかしこうして契約が成立したとしても、出荷されていくのは倉庫に在庫してあるドロイドなのだ。所詮彼らはショールームの見本。どんなに愛嬌を振りまいても、新しい人生をスタートできるのは倉庫でまだスイッチも入れられずに眠っている連中だ。
 R5-W55は再び窓際に戻って外を眺めた。そしてため息を付くように電子音の鳴き声をだした。
 私は誰かに売られるの?このまま私の型が古くなったら、どうなっちゃうの?
 考えたくはないが、彼女の回路に「スクラップ」という言葉が駆け巡った。もしそうなってしまったら、どうなるのだろうか。
 こんなショールームから出られないうちに、人生を終えてしまうなんて。

 そんなある日。その日も客の一人がR2-U9の前で店員と話していた。あのR2ときたら、自分が売れるわけでもないのにあんなに可愛い声を出して――
「申し訳ありませんが、R2は在庫が切れていまして。人気が高くて次の入荷もいつになるか分かりません。現品でよろしければ、いくらか値引きしてお売りしますが。もちろん、こちらの方で整備清掃をしてから新品同様の状態で納品するつもりです」
 なんですって?
「ああ構わないよ。安くしてくれるんならね」
 なんと、今まで無理と思われていたことが起こった。R2-U9が売れたのである。驚いたR5にR2は唾を吐くように鳴いた。
 お前なんか売れ残ってスクラップになっちまえ。
 私だっていつかきっと誰かに買ってもらえるもん。
第二話
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