PORSCHE
信沢 保の
PORSCHE 特集
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特集では、メインのページだけでは紹介しきれないことを、解説していきます。


2007/8月号
996蒐集のすゝめ


 自動車の世紀だった20世紀も終わりに差し掛かった1997年、ポルシェ911は空冷から水冷に変わった。
 タイプ993の傾斜したライトの衝撃から数年後だった。空冷水平対抗エンジンを後ろに積んだ後輪駆動方式というポルシェ始まって以来の伝統の中で一つがここで途切れたことになる。しかしそれはVWが空冷RRを捨ててからずっと後のことだった。空冷RRという方式が先進的と言われたのは、フォルクスワーゲンを生み出そうとしていた戦前にまで遡る。VWの遺伝子を貰ったポルシェは356から911へと確かに伝統を受け継がせた。最初の運命の分かれ道は70年代に訪れる。VWは水冷FFのゴルフを、ポルシェは水冷FRの928に未来への道を明け渡した。しかしVWは新たな道を歩みだしたが、ポルシェは結局元のレールに戻ってきた。
 常に先進的だったフェルディナント・ポルシェの会社として、996の登場は遅すぎたのかもしれないが、モデルの寿命が長いのも先進的であるからこそであろう。モデルイヤーで98年型からタイプ996の911カレラが登場した。グミュントの小さな工場で356を作っていた頃から半世紀が経ち、ポルシェは大きな一歩を踏み出したのだ。


 世の中の景気も回復してきた時期であり、996のデビュー時には多くの新製品が登場した。まだボクスターのミニカーもそれほど出回っていなかった1999年、僕が最初に手にした996はHWのGT3だった。996のデビューから1年後の99年型にGT3は早くも登場している。HWは普通のカレラではなくGT3に目を付けたようだ。しかもただのGT3ではなく純レース仕様のGT3カップのモデル化だった。HWは同じ年に996顔の911GT1-98もファースト・エディションとしてリリースしている。
 さらに真っさらな911カレラもマイストから登場した。内装もサスもない簡素な作りだが、小振りで996の形をよく表したモデルだ。HWとマイストはどちらもトイザらスに並んだので手に入りやすかった。ドイツのシクからも1/55スケールで作られ、パトカー仕様も登場した。マジョレットからもすぐに996が発売され、2000年頃にはカバヤのブリスターで広く出回った。
 HWと同じくマテルのマッチボックスからはカレラ・カブリオが登場した。こちらは国内ではそれほど出回らなかったので(近年スーパーファストとして日本のトイザらスにも入った)手に入れたのは後になってからだったが、996はデビュー間もなくして主な車種がミニカーとして出揃った。

Hot Wheels 911 GT3 Cup
Maisto 911 Carrera
Siku 911 Carrera
Hot Wheels - 911 GT3 Cup

Maisto - 911 Carrera

Siku - 911 Carrera

Majorette 911 Carrera
Matchbox 911 Carrera Cabriolet
Majorette - 911 Carrera

Matchbox - 911 Carrera Cabriolet

Siku 911 Carrera Polizei Featured : Siku - 911 Carrera Polizei
 1/72を除けば996で唯一のパトカーバージョン。シクは356の時代から伝統的にポルシェのPolizei版をリリースしている。これは930ターボ以来のパトカー版になった。他にも色々なバージョンがあるがそれはシク特集を参照してほしい。パトカー好きなら絶対欲しい。

 996のリリースは2000年まで続いた。シクは完全な新金型でカブリオを出した。そしてウェリーとモーターマックスもそれぞれカレラを出している。モーターマックスはこの頃まだ身近な存在ではなかったため、正確にいつ頃のものかは分からない。モーターマックスが1999年に設立された会社なので初期モデルの1台である996は1999年か2000年のリリースと思われる。ウェリーも2000年頃に登場した高品質なモデル群の一つである。

Siku 911 Carrera Cabriolet
Welly 911 Carrera
Motormax 911 Carrera
Siku - 911 Carrera Cabriolet

Welly - 911 Carrera

Motor Max - 911 Carrera

 2000年を過ぎるとミニカーラッシュは一度去った。2001年頃に出たオートアートのカブリオが今のところリリースされた中で、古いヘッドライトを持つ最後の前期型996である。
 実車では2000年型にカレラ4と新しいデザインのライトを付けた911ターボ、2001年型にはターボライトでカレラ4SとGT2が登場し、さらにGT3のバリエーションが増えた(RとRSだが古いライトでの登場)。この年カレラもマイナーチェンジされ、ターボと同様のライト形状になった。しかしこのタイプのカレラは今のところミニカーになっていない。ミニカーメーカーの次の標的になるのはターボであろうと思われた。最初の1台になったのは2002年登場のマッチボックスだった。
 このマッチボックス版はしばらくの間唯一の996ターボだったが、2003年から2004年にかけてオートアートとノレヴからも登場した。ノレブはこう見えて大振りで大雑把な作り。個人的にはマッチボックスが一番好きだが、どちらも良作だ。しかしノレヴはリアサイドにヒゲを付け忘れている。

Autoart 911 Carrera Cabriolet
Matchbox 911 Turbo
Autoart - 911 Carrera Cabriolet

Matchbox - 911 Turbo

Autoart 911 Turbo
Norev 911 Turbo
Autoart - 911 Turbo

Norev - 911 Turbo

 2002年型では新型ライトでカレラ4がリニューアルされ、ようやくタルガも登場した。993から911タルガの概念は一新されており、大きなロールバー付きのオープンではなく、透明なスライディング・ルーフとなった。車名も911タルガであり、964までのようにカレラのボディ・バリエーションという形ではなかった。この新しいスタイルの911タルガは996に限らずまだミニカーになっていない。
 GT3は2003年型で第二世代になった。かつてのカレラのようなストライプを付けたGT3RSもこの年に出ている。

Maisto 911 Carrera 4S Featured : Maisto - 911 Carrera 4S
 2003年頃、意外な車種が意外なところから出てきた。ターボと同じヘッドライトとフロントバンパーを持ったカレラ4Sである(Sというグレードが付くカレラはブレーキやシャーシなどをターボと共有している)。カレラ4Sの特徴は以前の空冷911のようにテールライトがつながっていることだが、マイストはライトを塗らないので普通のライトに見えてしまう。それにしてもターボ型ライトの羽なし996は今のところこれしか出ておらず、貴重な存在。

 次の年からは997が投入されるので、2004年型が996主体の最後の年となった。この年はGT3RSRやターボSが登場し、996は最後の進化を遂げた。ここにきてターボ・カブリオも登場した。
 2005年型は997のカレラが登場したので、996はGT系やターボなどの高性能モデルばかりが残っていた。以後996はラインナップからフェードアウトしていく。
 2005年はポルシェのミニカーの当たり年で、リアルトイと京商から新金型が一気に登場した。後継のタイプ997はすでに投入されていた(この時リアルトイがカレラSを出している)が、996を見放すにはまだ早い。しかし普通の911カレラのモデル化は流石になく、2003年型からの新型ライトのGT3群が登場した。
 リアルトイは金型を使い回し、ウィングパーツを差し替えることで普通のGT3とGT3RSを登場させた。特に白いボディにストライプ付きのGT3RSのリリースには心が躍った。普通のGT3はウィングの年式を間違えている(京商版が正しい)。
 京商では最も新しい1台としてGT3がラインナップに入った。京商らしい堅実な作りの良作と言える。

Realtoy 911 GT3
Realtoy 911 GT3 RS
Kyosho 911 GT3
Realtoy - 911 GT3

Realtoy - 911 GT3 RS

Kyosho - 911 GT3

 2006年になるとタイムリーにリリースされる996ミニカーの流れも終盤になってきた。年式に関係なくモデル化していく京商とそして、驚きのダークホースが突然現れた。僕が情報を得たのがこの年というだけだが、マイストなどのOEMで食い繋いでいたエドカーからエドカーらしからぬ1/64のターボがリリースされた。とうとうエドカーもオリジナルを出してきたかと一時は思われた。
 京商のリリースでは996は2台登場した。GT3RSは前年のリアルトイと同じチョイスだが、GT2が初のモデル化となった。1/43ならまだしもこのサイズでは諦めかけていたので嬉しいモデル化だった。

Edocar 911 Turbo
Kyosho 911 GT3 RS
Kyosho 911 GT2
Edocar - 911 Turbo

Kyosho - 911 GT3 RS

Kyosho - 911 GT2

Autoart & Edocar 911 Turbo Special Featured : Autoart & Edocar - 911 Turbo
 エドカーの996ターボはオートアートによく似ている。テールライトがボディ一体になっていることから別金型であると思われるが、シャーシを見ても明らかに共通点がある。推測するにオートアートがエドカーのレギュラー・ラインに見合うように廉価版を生産したのだろう。何しろエドカーはこれを他のマイストやリアルトイのキャストと同列に並べていた。OEM版のキャストがオリジナルから変更されているケースは前例があり、オートアートOEM説は固い。しかし相変わらずな姿勢でミニカーを売っていると思っていた矢先、エドカーは今年倒産した。

Kyosho & Realtoy 911 GT3RS Special Featured : Kyosho & Realtoy - 911 GT3 RS
 伝統的な白いボディのGT3RSは996コレクションのハイライトである。探してでもも絶対欲しい。京商はカラバリが少なかったため1バリの混入率は高く、いいトレードレートを探して手に入れることは十分可能と思われる。ヤフオクにもたくさん出てる。リアルトイは5台セットの1台として手に入れやすくなった。僕は青ストライプのリアルトイを探し中。世界の一部地域ではコーギー・ブランドとして出回ったらしい。

 以上現在リリースされている996はほとんど網羅した。できる限り最初にリリースされたバージョンを載せている。新しい製品しかないので、入手困難なレア品はあまりない。しかし996コンプを目指すのなら今のうちに手を回した方がいいだろう。僕が存在を知りながら未だに手に入れることができないのはTrack Speedという名前で売られているらしい996ターボだ。画像は以下のサイトで見ることができる。
Mick's The Unknown
今のところメーカーなどは分かっていない。品番はTA2327で、あまり見慣れない品番だ。作風はそれほどチープな感じを受けない。このミニカーについて何か知っていたらご一報お願いします。

 996のミニカーがここで終わったかといえば、そうでもないようだ。オートアートの公式サイトによればこれからも多くのポルシェの車が予定として挙がっている。そこには996も含まれており、以下にリストアップする。
Autoart 911 GT3RS - 911 GT3
- 911 GT2
- 911 GT3 RS
- 911 GT3 RSR
 GT3は1999年の初期タイプ(このサイズにはまだない)で、あとは新型ライトの新しいモデルとなる。GT3 RSRも、京商に先を越されたりしなければ初のモデル化になる。GT2は京商で出ているが、予告をしていたのはオートアートの方が早かった。画像は公式から。GT3 RSは他のメーカー同様赤と青のストライプ2種類が用意されている。他の996系は詳細な画像はないが、1/64の一覧を追っていけばサイドビューを見られる。日本の1/64系メーカーと違って気が長いので、こっちも気長に待とう。
AUTOart


996

 世の中に登場した996のミニカーを時代を追って紹介してみた。996ミニカー小史といった感じでまとめた。ここではあえて1/72ミニカーは除外してある。僕自身は1/72も同じように一所懸命集めているが、このような3インチ・ミニカーとはやはり一線を画すものだと思っている。今年で996も10歳になり、ミニカーになる機会も減っていくと思われる。今はまだ新しい物という感覚で買うことができるが、この感覚が変わったとき996コレクションは違った輝きを放って見えるのだろうか。しかしその時になるまではまだ時間がかかりそうだ。

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