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信沢 保の PORSCHE 特集 のページ |

911の誕生からだいたい10年経った1973年、911はアメリカの安全基準に合わせて大型バンパーが付いた。これは5マイルの速度でぶつかってもバンパーが変形してまた復元するようにできているもので、5マイルバンパーと呼ばれる。このような走りの性能とは直接関係しない改良もせざるを得なくなっていった時代だが、このバンパーは古くなっていた911の見た目を一気に現代化させた。モデルイヤーで1974年型にこの変更が行われたが、ビッグバンパーは911の寿命を1989年まで伸ばすことになった。911にとっては大きな変革で、1973年までのナロー911と区別して930、ビッグバンパー、Gシリーズなどと呼ばれるが、基本的にはナローと同一の車である。要は後期型911だ。89年に登場した4WDの新型には964というタイプ番号が付いたことから、オリジナル911は89年型までということになる。
このビッグバンパー時代にはターボが登場してミニカーもかなり作られたが、やはり930ターボのモデル化が集中して自然吸気モデルは非常に少ない。上の三台はそんな少ない中でも特にエクセレントなミニカーだ。左からシュコーの911カレラ、京商の911SC、トミカの911Sである。衝撃吸収バンパーに、羽やオーバーフェンダーのないクリーンなボディの組み合わせが美しい。しかしシュコーは本当に911「カレラ」なのか?京商は?トミカは?そんな疑問が浮上してきたので、今回はそれを検証する。以下にGシリーズ以降(1974年〜1989年)の911の変遷をまとめたいと思う。そしてこの三台の正体はなんなのか明らかにする。
モデル名
ナロー時代の最後はT・E・Sの3グレードだったが、74年型にはグレード名の付かない「911」が復活した。911Sは継続し、さらに上に911カレラ2.7が設定された。これまでポルシェのトップに立つ名前とされていたカレラが安売りされることになったが、さらに上にカレラRSおよびRSRが作られた。75年型の後半で930ターボが登場し、Sのグレードが76年型には消えることになった(カレラは3.0に発展)。そして78年型からはさらに種類が統一化され、911はSCとターボのみになる。84年型にSCは911カレラ3.2となり、それから911カレラはターボに対する自然吸気モデルのネーミングとして定着することになった。911カレラが復活したのは、911から928へ移行するという経営者の計画と、実際の販売数の食い違いから再び911路線に戻した結果だった。こうして現在にいたるまで911はポルシェのセンターステージに留まりつづけている。
一方アメリカと日本向けには911Sが76年と77年にも存在した。78年に911SCになっても、日本向けには911SCSが用意され、81年型まで存在していた。またアメリカ向けに912Eが76年だけ作られた。これは914から924に移行するまでのブランクを埋めるための措置だった。
各年式のラインナップは別ページにまとめた。CLICK HERE
ボディ![]() 三つ目のボディはターボルックで、ターボと同じくフェンダーの大きく膨らんだボディとなる。ただしリアウィングは必ずくっ付いてくる訳ではなかった。このボディはカレラ3.2になった84年から注文できたが、カタログに載ったのは85年からだった。 |
ホイール
74年型Gシリーズになった時ホイールは三種類で、911はビンテージなスチールホイール(左上)、911Sはシルバーのアルミ鋳造クッキーカッターホイール(右上)、911カレラはシルバーのフックス製アルミ鍛造ホイール(左下)となった。これはつまりポルシェアロイだ。モデルとホイールの組み合わせは前項目の画像を見ても分かるだろう。何れもナロー時代から引き継いだホイールだった。スチールホイールは911としては74年が最終年式となり、75年には911にもSと同じクッキーカッターが装備された。ただ76年の912Eにはスチールホイールが付いていたとかいないとか?オプションによって他のホイール(特にアロイ)を選ぶことができたと思われるが、そこまで解説できないので省略する。78年の911SCはボディはそれまでのカレラと同じものの、性能面では下回るのでアロイではなくクッキーカッターが標準となった。80年からは窓枠がメッキから黒塗りになったので、ホイールも黒塗りのクッキーカッターが登場したが、依然としてシルバーの物も存在したようだ。オプションでSCにもアロイを選択できた。 84年の911カレラ3.2からは928から頂いたアルミ鋳造テレホンダイヤルホイール(右下)が標準になった。なぜならこっちの方が見た目がいいと判断したからだった。アロイは引き続きオプション扱いとなったが、オーナーがどちらを好んでいたのかは現存する911のアロイ率の高さから分かる。 911の歴史の間には様々な特別モデルが作られたが、それらには基本的にアロイホイールが付けられた。ボディ色とコーディネートされたアロイホイールも多く存在した。911の基本ラインから外れるが、74年の911カレラRSRには917と同じタイプの5スポーク・センターロックが付けられていた。 |
外装・トリム類
ナロー時代にはトップモデルのカレラRSでもメッキの窓枠だったが、74年型では黒塗りの窓枠が登場した。全モデルで標準はメッキの窓枠だったが、カレラではオプションでブラックルックを選ぶことができたようだ。この時はまだライトのリムはメッキだったようだ。ドアミラーもまだナローと同じメッキパーツだった。ちなみにバッジ類やワイパー、エンジンフードのグリルなどはナロー時代ですでにブラック化されていた。ヘッドライトリムは75年からカレラでボディ同色とされるのが標準となった。76年には全モデルでドアミラーがボディ同色の新型となり、見た目がぐっと現代化した。しかし助手席側のミラーは80年代までオプションだった。
78年911SCの窓枠は未だにメッキだった。それに合わせてドアハンドルとヘッドライトリムもメッキとされた。しかし日本には911SCSというモデルがあり、黒い窓枠に黒いアロイホイールを持っていたようだ。ブラックルックがオプションから標準化されたのは80年だった。それと同時にヘッドライトリムもボディ色となり、911はかつての光り物を捨てることになった。
ライト類
ヘッドライトリムがボディ色になったのは前項目で述べた。ヘッドライトといえばアメリカ仕様には上面が広い特別なリムがナロー時代から付けられていた。おそらく光が前方以外に漏れないようにするための措置と思われる。さらにアメリカ仕様では前のウィンカーがサイドまで回り込む形に拡大されていた。日本にはアメリカ仕様に近い物が輸入され、日本仕様でもアメリカと同様のライトやウィンカーだったと思われる。画像上がヨーロッパでのライト。77年の911カレラなのでライトのリムはボディ色になっている。下が1974年のアメリカ仕様911S。ライトの形が異なり、ウィンカーが横からも見えるように延長されている。バンパー上に付くヘッドライトウォッシャーは76年にはカレラに付くようになり、80年にもっとコンパクトなもの変わった。
911SCの途中の81年からフロントフェンダーにサイドマーカーが付くようになった。サイドマーカーが付いたことで、日本仕様でもウィンカーの大きさはヨーロッパと同じになった。しかしアメリカ仕様にはサイドマーカーは付かず、それまでの拡大ウィンカーを使い続けた。世界共通の話題では84年のカレラ3.2から、別体だったフロント下部のフォグランプが埋め込み式になった。
バンパー
アメリカ仕様の話が出たのでついでに書いておくと、バンパーはアメリカ向けに衝撃吸収バンパーになったが、ヨーロッパ仕様では中にただの鉄の棒が入っているだけで衝撃を吸収しなかった。ただし見た目としては違いはない。アメリカ仕様ではリアバンパーのオーバーライダーが大きく、これは日本仕様には付いていなかった。ホットウィールの930ターボを見てみれば、オーバーライダーが他と違うことが分かる。この他にもHWにはアメリカ独特の仕様が見られるので面白い。
スポイラー
リアスポイラーはターボの専売特許のように思うかもしれないが、自然吸気モデルにも常に用意されていた。74年型911カレラでは前年の911カレラRSから受け継いだダックテール型(画像上)がオプション装備された。ほとんどの車両はリアスポイラー付きだったようだが、ドイツ国内では歩行者に危害を与えるとして禁止されていた。この年の911カレラRSではホエールテール型(画像中)が装備された。このカレラウィングは同じ頃発表された試作の911ターボのウィングと同じ物だ。画像はターボウィング。このスポイラーはラバーで縁取りしてあり、911カレラには75年型からこのホエールテールが用意されたが、ターボと違ってウィング上のスリットは付かなかった。
78年の911SCでもこのカレラウィングが引き継がれたが、ターボの方ではティートレー型(画像下)に変わった。SCでは82年にこの新しいターボウィングと似た形になったが、SCタルガにはそれ以前(78年から?)に新しいウィングを付けることができた。画像は78年以降のターボウィング。911用のウィングでは両サイドの立ち上がりはなく、それまでのホエールテールと同じシルエットだったが、上面を一面スリットで覆って新しいターボウィングに似せていた。911のウィングは常にオプションであり、なおかつターボとは違う物だったようだ。しかしターボルックにはターボと同じウィングを付けることができた。
またフロントバンパーの下に取り付けるリップスポイラーもオプションとして存在していた。リアスポイラーと合わせて付けるのが普通だったようだ。
ボディ・バリエーション
911のオープンボディはナロー時代に引き続きタルガが用意された。89年の911の終了まで基本的な車種には全てこのタルガが用意されていた。ただしターボには87年型まで待たなければならなかった。ちなみに911の三角窓はナロー時代にはめ殺しになったが、その年にタルガのリアウィンドウは脱着不可の窓ガラスに変わったので、換気のためにタルガには開閉式三角窓が残された。その三角窓は74年以降でもまだ残っていたが、77年型からはクーペと同様にはめ殺しになった。完全なフルオープンとなる911カブリオが登場したのは、911SCの最終年式83年型だった。
翌84年型911カレラ3.2からはクーペにターボルックボディが存在する。86年型からは911カレラの全てのボディ(クーペ、タルガ、カブリオ)でターボルックが選べた。しかしそれより前の911カレラでもオープンボディにターボルックを組み合わせた特注車が存在した。最後の年となる89年はスピードスターが356以来に復活した。これは911カレラのバリエーションではなく911スピードスターという車名が付けられ、オプションのターボルックを選択した車が大部分を占めた。
また911SCにはいくつかのフラットノーズ仕様が作られた。標準仕様の911SCを改造することで作られ、82年に4台、83年に1台だけ作られた。
Schuco 911 Carrera
モデル表記は911カレラになっており、時代的に見て74〜75年の911カレラ2.7または76〜77年の911カレラ3.0のモデルと思われる。ホイールはスチール風だが、シュコーはホイール共通なので関係ないものとする。フェンダーを見てみると膨らみがほとんどない。微妙な縁取り程度しかなく、これは911/911Sの特徴に近い。このボディは911カレラではないのではなかろうか。しかしフロントにスポイラーが付いているというのが気になる。果たしてカレラ以外でこのスポイラーを付けることができたかどうかはよく分からない。初期の段階ではカレラのみのオプションだった可能性がある。リアフードのエンブレムはなし。いつからか知らないが、車名のバッジを外すというオプションもあった。
Kyosho 911SC
京商のナイスジョブの一つ。911SCでブラックルックが標準なのは80〜83年。それまではオプションだった。黒のアロイホイールはSC時代を通してオプションとなる。911SCの時代にはアロイホイールはシルバーから黒塗りになっていたようだ。しかし明らかにミスだが、後ろのエンブレムがカレラになってしまっている。84年以降のカレラ3.2でも見た目はほとんど変わらないから困ったことになった。SCか、カレラか。フォグランプが別体か一体かで区別できるが、ミニカーではどちらでも同じ表現になるしかないので判断材料にならない。ホイールもアロイを履いているのでどちらとも言えない。このままではSCではなくカレラと断定するのが妥当なところだろうが、まだ注目するべきポイントがある。京商にはサイドマーカーが付いていない。81年からはサイドマーカーが付くようになるので、カレラだとしたら当然付いているはずだ。京商はサイドマーカーもしっかり付けるメーカーなので、これは大きなポイントになる。
Tomica 911S
エンブレムは911Sとなっている。このエンブレムもシルバーではなく黒のはずだが。ドアハンドルだけシルバーなのも謎。黒の窓枠にシルバーのアロイホイール。この組み合わせは恐らく74年からの911カレラのもの。911Sはメッキの窓枠にクッキーカッターを履いていた。フェンダーは結構膨らんでいるように見えるが、どちらにも解釈できる。しかし日本には76〜77年にも911Sが存在し、それがどのような仕様だったのかが不明だった。しかしこれ、青箱の絵を見てみると面白いことが分かる。
どうやらトミカリミテッドの仕様はこの箱絵が元になったようだ。ウィンカーやライトからヨーロッパ仕様らしいことが分かる。一方実際のミニカーはウィンカーが広く、日本仕様風にしている。黒の窓枠にライトのカラードリム、シルバーのアロイホイール、そしてリアフェンダーは明らかにカレラの膨らみを持っている。さらによく見るとミラーがメッキなので、これは75年型911カレラ2.7をイラストにしたものだろう。
パトカー版の絵と比べると違いがよく分かる。こちらは窓枠からドアハンドル、ヘッドライトまで全てメッキで、ホイールはクッキーカッターとなっている。フェンダーを見れば膨らみのないスマートなボディを持っているのが分かる。これが74〜75年の911Sの姿である。
トミカは911カレラではないかと思ったが、ネコの本で日本仕様の77年型911Sの写真を見つけたところ、なんと黒い窓枠にシルバーのアロイホイールという仕様だった。76〜77年の911Sは標準ではないが、ブラックルックを選ぶことができたようだ(日本ではそれが仕様だったかも)。アロイはどの時代のどのモデルでもだいたい付けることはできたと思われる。ヨーロッパでは消滅したSが76年にも継続していた日本では911、S、カレラの三本立てだったが、実際には911はごく少数しか売られていなかった。つまりカレラに対するスタンダードモデルがヨーロッパでは911、日本とアメリカでは911Sだったということらしい。
結果発表
当初の予定ではシュコーは911/911S、京商は84年以降の911カレラ3.2、トミカは74〜77年の911カレラと断定しようと思っていたが、検証していて考えが変わった。京商のエンブレムは純粋なミスとして語り継がれるが、シュコーとトミカに関しては特に間違ったことはしていない。なのでそれぞれ正しい車種表記であることにする。長々と書いておいて結局はそのままということで結論にしたが、他のミニカーを検証する時に参考になると思うのでこうして特集にまとめてみた。
| 911 in 1974-1989 | ビッグバンパーモデルのミニカーを紹介。ミニカーはとても限られている。ターボルックの割合もあって純粋な911のミニカーは少ない。この他にはDardaの911タルガ、ジョニーライトニングの911カレラ3.2TL、トッツィートーイの911カブリオがある。 |
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1974 911 Carrera 2.7 / Hot Wheels このモデルにダックテールが付くのは74年だけ。75年からはホエールテールになる。ドイツではダックテールは付かなかった。ボディシェルのスーパー解釈はさすがアメリカ。 |
1974 911 Carrera 2.7 / Universal 初期の製品ではかなりホットウィールと瓜二つなキャストだったが、サンプルはかなり劣化している。管理をしっかりしないと金型がどうなるかといういい例。 |
1976-77 911S / Tomica 本国では75年までだが、日本仕様では77年まで存在した911S。ナローを彷彿とさせるシンプルなボディが綺麗だ。 |
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1976-77 911 Carrera 3.0 / Schuco シャーシ裏に200psとあるので76年からの911カレラ3.0とする。カレラ2.7の210psから少し低くなっているが、これは過大申告の修正分とされた。 |
1978-80 911SC / Kyosho 初期のSCで黒い窓枠はオプション、80年から標準とされた。81年からはサイドマーカーが付くので80年までのSCとする。フェンダーがちょい膨らみすぎ。 |
1986-89 911 Carrera 3.2 Cabriolet TL / Siku カレラ3.2は84年からのスタートで、ターボルック(TL)は最初から用意されていた。さらにカブリオボディで選べるようになったのは86年から。 |
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1989 911 Speedster TL / Maisto 911最終年式の89年に用意されたのがスピードスターで、ターボルックがオプションになっていた。この車が最後に生産されて911はタイプ964に移行した。 |
19?? 911 / Unknown メーカー不明の911。作りが甘すぎて細かいグレードは一切謎。 |
今回はやけに細かい部分まで実車の変遷を追ってみたわけだが、最近のミニカーのディテールアップは特に進んでいて、ミニカー相手にももっと細かい知識が必要になってきた。窓枠の色違いの問題もそうだが、ミニカーでの特に大きな変化はホイールが実車に合わせて作られるようになったことだ。10年前ならこのサイズのミニカーでホイールなどを気にすることはなかった。しかし作りが細かくなっていく一方で、作りこんでいるが故に矛盾した部分が出てくるようになった。これからはそういう問題が増えそうだ。
できるだけ真実を追究してまとめたが、ポルシェにはオプションや特注車が多くてはっきりと決まった歴史のラインはない。一つの資料を信じずに他のソースとも比べるのがお勧め。
